ゆったん@したっぱ薬剤師

病院薬剤師の日々の戦いについてまとめています。

ザイザル®錠<一般名:レボセチリジン塩酸塩>

花粉の時期は辛いですね。先月受診して薬をもらってきました。

現在授乳中、運転は週に1,2回、内服薬希望と申告した私が処方されたのはザイザル錠でした。

 

レボセチリジンは、ラセミ体であるセチリジンのR -エナンチオマーであり、セチリジンと同様に、持続性選択ヒスタミンH1受容体拮抗・アレルギー性疾患治療薬です。

ヒスタミンH1受容体に対する親和性はセチリジンよりも約2倍高いとのこと。

インタビューフォームにはl-体とd-体の違いについて以下のように記載されています。

レボセチリジンは、もう 1 つのエナンチオマーであるデキストロセチリジンと比べ、ヒトヒスタミン H1 受容体に対する親和性が 30 倍高く、解離速度は緩徐である(解離半減時間はデキストロセチリジンの 7 分に対してレボセチリジンでは 115 分)

エナンチオマーにすることで効果が高く、長く効くようになったということでしょう。

 

効能または効果

[成人]
アレルギー性鼻炎
○蕁麻疹、湿疹・皮膚炎、痒疹、皮膚そう痒症
[小児]
アレルギー性鼻炎
○蕁麻疹、皮膚疾患(湿疹・皮膚炎、皮膚そう痒症)に伴うそう痒

 

成人と小児で微妙に適応が違うようです。

小児に対しては対症療法的に使用するということでしょうか。

 

用法用量

添付文書の用法用量の項目には以下のように記載があります。

[成人]
通常、成人にはレボセチリジン塩酸塩として1回5mgを1日1回、就寝前に経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、最高投与量は1日10mgとする。
[小児]
通常、7歳以上15歳未満の小児にはレボセチリジン塩酸塩として1回2.5mgを1日2回、朝食後及び就寝前に経口投与する。 

 

小児には分2で投与するとは知りませんでした…

ちなみに、ドライシロップのほうの添付文書を参照すると、6か月以上1歳未満の小児には1回2.5mlを1日1回、1歳以上7歳未満の小児には1回2.5mlを1日2回、7歳以上15歳未満の小児には1回5mLを1日2回となっています。

 

分1就寝前と明記されている抗ヒスタミン薬はザイザルとジルテック(一般名:セチリジン塩酸塩)だけです。

(例えばクラリチン®錠(一般名:ロラタジン)やアレジオン®錠(一般名:エピナスチン塩酸塩)はザイザルと同じく分1投与ですが、食後としか記載がありません。)

副作用の眠気への対応として、ということでしょうか。

重要な基本的注意の項目には以下のように記載があります。

眠気を催すことがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作には従事させないよう十分注意すること。

 

運転NGは服薬指導時には押さえておかないといけないポイントですね。

ちなみに、添付文書における副作用としては、眠気・倦怠感は5%未満とのことになっています。

 

用法用量に関連する注意として、添付文書には以下の記載があります。

腎障害患者では、血中濃度半減期の延長が認められ、血中濃度が増大するため、クレアチニンリアランスに応じて、下表のとおり投与量の調節が必要である。

表は割愛しますが、Ccr<80で減量が必要となります。

そのために割線が入っているんですね。

なお、透析患者への投与方法については添付文書には記載がありませんが、過量投与における処置の項目には「本剤は透析で除去されない」と記載されています。

 

併用注意

いくつかありますが、個人的に気になったのは以下の二つ。

  • リトナビルとの併用

リトナビル暴露量のわずかな変化(-11%)が報告されているとの記載があります。

リトナビル内服中の花粉症患者にわざわざザイザルを選択する必要はなさそうですね。

  • ピルシカイニドとの併用

機序は明らかではないようですが、両剤の血中濃度が上昇し、ピルシカイニドの副作用が発現したとの報告があるようです。

こちらも腎排泄が関係しているのでしょうか。

 

なお、両方ともセチリジン(つまりラセミ体)との相互作用として記載されていますが、R-エナンチオマーのレボセチリジンでも同様の相互作用は多少なりともあると考えています。

 

臨床検査結果に及ぼす影響

この項目は読み飛ばしてしまうことが多いですが、以下の記載があります。

アレルゲン皮内反応を抑制するため、アレルゲン皮内反応検査を実施する3~5日前より本剤の投与を中止することが望ましい。

ヒスタミン薬にはこんな注意書きがあるんですね。

薬効薬理の項目に以下のように記載があります。

ヒスタミン誘発皮膚反応における膨疹及び発赤抑制作用は投与後1時間から認められ、投与後32時間まで持続した(ヒト)

 

禁忌

禁忌については以下となっています。

ピペラジン誘導体に対し過敏症の既往のある患者

重篤な腎障害の患者

ピペラジン誘導体はキノロン系の一部(クラビット®など)やフェノチアジン系向精神薬の一部(ノバミン®など)、Ca拮抗剤の一部(ミグシス®など)が該当するようで、かなり幅広い…。

ちなみに、アタラックス®の添付文書にはセチリジンが禁忌と明記されています。

 

まとめ

花粉症に対して使用している身としては、1日1回で良く、H1受容体親和性が高い(≒効果が高い)のはとても良いですし、母としては小児に対して使用可能なこともありがたいですが、運転NGなことはネックです。

薬剤師的には、相互作用や過敏症、腎障害など注意すべきことがやや多いなあという印象です。

 

 

スインプロイク®錠<一般名:ナルデメジントシル酸塩>

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